社長ブログ -雑多な日々-

チップ

[社長ブログ] 2011年07月09日



20歳頃の話です。


わたしは仙台市内のビジネスホテルの


レストランのウェイターでした。




夜も遅く0時頃。


閉店時間なので、わたしは一人レジを閉めていました。


「レジを閉める」とは、その日の売上伝票、


現金の集計をする仕事です。


20歳で主任としてレジを任されていましたので、


けっこう信用があったようです(笑)。




一人のお客様が入ってきました。


上品そうな初老のご婦人です。


「申し訳ございません、もう閉店なんですよ。」


とお話したら、ご婦人は残念そうにしていました。




「新しくできたホテルだからどんなのか見たかったの。」




そうか~。


こんな時間でも来てくれるなんてありがたいですね。


ただし、閉店時間を過ぎて注文を受けることはできません。


んじゃ、レジを閉める間、お水くらいなら、とお店に通しました。




お水を出すときに、せっかく来て下さったのだからと、


このホテルは客室が何部屋あるとか、


料理長はフランスで星を三つもらってきて、


すごくきれいで美味しい料理なんですよ、とか、


かけ出しで、しかもオープンしたてのホテルでしたから


ロクな説明もできませんでしたが、

わたしなりに精一杯話しました。




そして、「ごゆっくりどうぞ」


と言って席を離れました。




何分かして、ご婦人はレジ閉めをしている


わたしのところに近づいてきました。




「今日はどうもありがとう。」と言って、


中身が見えないように、丁寧に何重にも織った


ティッシュの包みを、わたしに渡そうとしました。




とっさに、あ、チップだ、と思って、


「ありがとうございます。でも規則で受け取れないんです。」


と言いましたが、ご婦人は、


「今日はホントにうれしかったの。ぜひ受け取って下さい。」


と言いました。




ホテルでは、建前上チップを受け取ってはいけません。


でも、先輩からは、


「お客様が気を悪くすることもあるから、


どうしても、という場合は受け取りなさい。」


と言われていました。


わたしは丁重にお礼を言って受け取りました。


ご婦人は笑顔で、「また来ます。」


と言って、お帰りになりました。




お帰りになった後。


早速中を見てみると、なんと、1万円が入っていました!


もうびっくり。




水一杯で1万円です。


料理も、飲み物も出していないのに。


このお店の、最高級のフルコースよりも高い金額です。


こんなことは、後にも先にもこれっきりです。


とてもとても感動しました。




そのとき、学びました。


お客様というのは、満足した対価を支払ってくれるんだ、と。


高いとか安いとかはお客様が決めることなんだ、と。




それは今でも、わたしの仕事の原点になっています。




うれしくて、裏でコップを洗っていた後輩に、半分あげました(笑)。