社長ブログ -雑多な日々-
今日は「能」の稽古でした。
宝生流仙台今宝会。
稽古は毎月一回。
東京から今井泰男、泰行親子のどちらかが
新幹線で仙台においでになります。
今井泰男先生は、91歳で、実力は人間国宝クラス。
でも行動が破天荒で(誰かみたいですね)、
人間国宝を取り損ねたみたいです。
しかし、並みいる人間国宝を電話一本で動かせる
「裏番長」のような存在のようです。
息子の泰行先生は、父に反発し、父以外の先生に師事し、
その反骨精神から今では父以上の実力。
教え方も大変厳しいことで有名です。
今日は泰行先生の稽古でした。
基本的に能の稽古は、マンツーマンで行われます。
最初は先生が謡い、生徒がついて謡います。
生徒はそれを録音し、次の稽古のときは
生徒から謡い、ご指導を仰ぎます。
稽古はとにかく緊張します。
しっかり謡えないと、「そうじゃない!!」と大声で怒鳴られます。
兄弟子の中にはそれが苦痛になっている人もいます。
でも、泰行先生、なぜかわたしにはとにかく優しい。
親切、丁寧。分かりやすい。
お父さんの泰男先生なら「さっ」と流してしまうところでも、
「なぜそうでなければならないか」をしっかり教えてくれます。
わたしは泰行先生の稽古が合っているようです。
夕方には合同稽古を行いました。
先輩方はみんな堂々としていてカッコ良いのです。
さすが、厳しい稽古を積んできただけのことはある、
といつも感心させられます。
今習っているのは経政(つねまさ)という物語です。
行慶という僧都(偉いお坊さん)が、平家の武将経政が
愛用していた琵琶を弾きながら弔っていたところ、
灯の中に人影が現れます。
経政の幽霊です。
経政は花鳥風月を懐かしみ、しばらく舞ったり
琵琶を弾いたりしていましたが、
突然修羅の苦しみに襲われ、浅ましく戦う自分自身を恥じ、
闇の中に消え失せます。
戦いで亡くなった無念さ、そして戦いの虚しさ。
そして死んでも音楽を愛し、自然を懐かしむ。
そこには欧米的な直接的な感情表現ではなく、
武士の定めを受け入れつつも「粋」な心を忘れない
日本人古来の姿があります。
謡いながら、美しい日本の風景が脳裏を駆け巡ります。
能は大変難しいし、覚えるまで何年もかかると思います。
でも、「ああ、日本人ってこうだよな」と再確認することができて、
毎回習いながらワクワクしています。
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